最近本棚の整理をしたところ、以前に買った、文章力上達系の本が色々出てきた。
丸谷才一や三島由紀夫などの文豪が書いた『文章読本』が10冊近く。
その他、日本語表現の辞典や、悪文矯正マニュアル的なものまで。
以前は各書籍のノウハウを頭に詰め込もうとがんばっていたが、覚えるべきノウハウが多すぎて混乱する一方だった。
そこで僕は、様々な文章力上達のノウハウを凝縮&厳選して、3つのルールに整理して実践するようになった。
今回はそんな僕のルールを、『読みやすい文章を書くための、たった3つの重要なルール』として紹介したい。
目次
ルール1.ストーリーを整理する
わかりにくい文章は、そもそもストーリーがないか、ストーリーが破綻していることがある。
(ストーリーがある=文章全体が理論と感情の両面で、すっと頭に入ってくる流れになっている状態)
ストーリーに問題がある文章は読んでも読んでも頭に入ってこないが、ストーリーが良い文章はそれだけで引き込まれてしまう。
(多少荒くても、流れの良い文章を読みたいのが正直なところ)
ストーリーを整理するためには、以下のような手段がある。
主張を整理する
限られた文字数では、多くのことを伝えられない。
複数の章からなるそれなりのボリュームの文書でなければ、基本的にはひとつの主張しか書くことはできない。
そのためにも、
『いま書いている文章を一言で表すとなんなのか』
と常に考えていると、主張が整理できる。
例えば今回の記事だったら、『読みやすい文章を書くための3つのルールを説明する』ということになる。
文章の意義を一言で表せないのならば、主張を整理するべきだ。
誰かに説明する感じで
文章を書いているとき、どうやってもうまくまとまらないときがある。
そんなときは、書こうとしている内容を友人や家族に話す様子を想像して欲しい。
話し言葉の速度で言葉を組み立てていくと、意外とスラスラと話の構成を整理できる。
ときに僕らは誰かと、電話で込み入った話をすることがある。会話だったらそれなりに、きちんと伝達することができるではないか。
しかし文章を書くときになると、妙にかしこまってしまって、本来の文章構築能力が働かなくなってしまうのだ。
ルール2.短くする
言葉に余計な飾りがついたり、冗長になっていくと、文章はどんどん読みづらくなる。
そんなときは、日本語として意味の伝わる、ぎりぎりのところまで切り詰めることをおすすめする。
文章がごちゃごちゃしてきたら以下のようなことを実践するといい。
- とりあえず形容詞(とても、すごく、信じられないほど、魔法のような、などのデコレーション)を消す
- 句読点(、。)を入れて一文を短くしてみる
- これ見よがしな慣用句や四字熟語を消してみる
短くしようと推敲するうちに、言葉は自然と簡潔かつ適切になっていく。
以下は、冗長な文章を段階的に簡潔にしていく例だ。
冗長な例
まさに私は昨日の夜にカレーライスを食べたのだが、そのことについて説明しておこう。鶏の胸肉は魔法のように柔らかく、それを食べた瞬間に天にも昇る心地に至るような味わいだったのは嘘ではない。脇には卵スープとシーザーサラダとコロッケがあり、食後には果物の盛り合わせとアイスクリームまで出てきたのだから、その食卓たるや珍味佳肴の饗宴といったものだった。私は喜色満面の笑顔で一気呵成とそれらを食した。
上記については、日本語としてはおそらく正しいが、無駄なデコレーションが多く、センテンスが長い箇所があり読みづらい。『ヘミングウェイ級の簡潔さ』を目指す必要はないが、やはりスマートな文章を心がけたい。
直した例
昨夜食べたカレーライスについて説明する。鶏の胸肉は柔らかく、本当においしかった。卵スープとシーザーサラダとコロッケが副菜だった。デザートには果物とアイスクリームを食べた。私にとっては大変な贅沢だった。うれしく食べきった。
もっと短文に
昨夜のカレーライスについて。鶏は柔らかだった。卵スープとシーザーサラダとコロッケが副菜、デザートは果物とアイスクリーム。
いかがだろうか?
自分のキャラクターや用途に合った、適度な簡潔さと丁寧さをもった語り口が望ましい。
とはいえ。
『センテンスが長いのに、読みやすい文章』があるのも事実だ。
逆説的な話になるが、文章に慣れてきたら、十分に注意を払った上で、長いセンテンスにチャレンジするのもいいだろう。
よく練られた長いセンテンスは、『流れるように多くの情報を読み取ることができる』という利点がある。
文筆家にとっては、長く流麗なセンテンスを使いこなすことができるのは、芸のひとつとなる。
長い一文にした例
昨夜のカレーライスについてだが、まず鶏の胸肉は柔らかく絶品、卵スープとシーザーサラダとコロッケが副菜で、最後はデザートの果物とアイスクリームが出たのだが、とにかく盛りだくさんのうれしい食事だった。
まあこんな感じだったら納得できる。
コツとしては、『いったん脳内で会話調で再生してから、言葉を削りつつ接続詞などをほどよく散りばめる』といった具合か。まあ参考までに。
ルール3.音読して推敲する
文章ができ上がったら、推敲のスタートだ。
しかし、自分で書いたものを自分で推敲するのは、なかなか難しい。
そこで、自分でうまく推敲する方法として、以下のように心の中で音読するやり方をおすすめしたい。
- 想像の中で、あなたの隣に、友人のだれかを座らせる
- その友人に対して、文章を音読する(本当に声を出さなくても、あたかも喋りかけるような想像をするだけでもいい)
- 友人の表情に注意する(顔をしかめるようなら、ストーリーが不明瞭か、文章が不正確だということだ)
- 想像の中の友人が終始にこやかな表情で耳を傾けてくれるようになるまで、推敲を続ける
この方法には、以下のような利点がある。
- ゆっくりと文章を追うことになるため、書くときには意識しなかった誤記に気付ける
- 『書く脳』から『読む脳』に切り替えることができる
- 気取りすぎている箇所や、不自然な箇所に気づくことができる
- 感覚的な観点で文章の流れを吟味できる(文法的には正しいが、どうも流れの悪い文章などを改善できる)
まとめ
今回は、『読みやすい文章を書くための、たった3つの重要なルール』として、僕が実践している文章執筆のコツを紹介させてもらった。
あなたの参考になれば幸いだ。
最後に、関連するおすすめの書籍を紹介したい。それぞれのレビュー記事を書きたいくらいの愛読書だ。