人工知能が進化していくと、近年、人間は5種類のロボットと接することになるだろう。「共生型ロボット」「ソフトウェア型ロボット」「ナノボット」それから……。
はたして、人工知能やロボットの発展は、人間にとってなにを意味しているのか。具体的に、ロボットとどんな関わり方をすることになるのか。
今回はそんなテーマについてまとめてみた。
目次
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- シンギュラリティ(技術的特異点)と人工知能
- 人工知能搭載ロボットは家電レベルで普及する
- 人間の幸福を主眼に置いた技術革新を
- 行動の責任
- 5種類のロボット
- 1.共生型ロボット
- 2.ソフトウェア型ロボット
- 3.業務用ロボット
- 4.ウェアラブル・人体融合型ロボット
- 5.ナノボット
- まとめ
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シンギュラリティ(技術的特異点)と人工知能
人工知能搭載ロボットは家電レベルで普及する
3Cと呼ばれる近代的な電化製品(カラーテレビ、クーラー、自動車)が普及したのは1960年代のことだ。
つまり、50年の間で、技術革新は僕らの娯楽や生活を一変させてきた。
近年の事例では、たとえばスマートフォンがある。普及レベルの実用性を備えた初期のスマートフォントとして挙げられるのは、iPhone4あたりだろうか。iPhone4が発売されたのは2010年のことだった。つまり、6年前まで僕らはスマートフォンを持っていなかったのだ。しかし今や、多くの人がスマートフォンに依存するようになった。
技術革新のスピードが加速している昨今、人工知能搭載ロボットはまもなく、一般的な電化製品と一体化して普及していくことになる。
現状でもすでに、人工知能を搭載した、家電とロボットが融合したような商品が流通しており、ますますこの流れは強まっていくだろう。
アマゾンの人工知能スピーカー「Amazon Echo」
熟練者級の業務用掃除ロボ「村田機械 Buddy」
人間の幸福を主眼に置いた技術革新を
人間は人工知能の研究を進めて、なにを実現したいのだろうか?
最強のロボットを作り、地球の支配者としたいのだろうか?
そんなわけはない。
あくまで人間が開発しているのは、人間の生活を豊かにするためのロボットである。
そのため、人間の幸福を侵害しない人工知能やロボットの開発が必要となってくる。
例えば医療・化学分野でも、旧来より様々な研究がされてきた。その成果は人間の幸福につながる医薬品やワクチンの開発に貢献してきたが、一方でその技術や知識が、化学兵器や細菌兵器の開発にも利用されてきた。
こういった技術の善悪両面性については、様々なことにあてはまる。「原子力の平和利用と兵器利用」「銃器による自己防衛と犯罪利用」「インターネットの利便性と闇」などなど。
このように、ある技術は人間を幸福にもするが、使い方次第で不幸にもする。
行動の責任
ロボットに行動をさせることで、だれかの害になってしまうことがある。ロボットの自由意思をどこまで許すのか、あるいは、ロボットの行為の責任をだれがとるのか、これが大きな問題となる。
トロッコ問題
有名な哲学的な問題として、トロッコ問題というものがある。
「場合によっては、二人の命のうち、一方を救い、一方を殺さなくてはならない」というパラドックスを扱ったものだ。
トロッコ問題(トロッコもんだい、英: trolley problem)あるいはトロリー問題とは、「ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるか?」という倫理学の思考実験。フィリッパ・フットが提起し、ジュディス・ジャーヴィス・トムソン 、ピーター・アンガーなどが考察を行った。人間がどのように道徳的ジレンマを解決するかの手がかりとなると考えられており、道徳心理学、神経倫理学では重要な論題として扱われている。
このトロッコ問題について考えると、重要な問題についてロボットの自由意志で判断させることの難しさがわかる。
妻と子どものどちらを救う?
ロボットの責任はだれがとる?
5種類のロボット
人間とロボットが平和的に共存するために、「目的に応じたロボットを適宜利用する」ような関係が望ましい。
(万能の人間型ロボットがあらゆる仕事を代替する、というのは、非効率的であるし、人間の利益と反する危険がある)
そんな前提に立って、昨今のロボットの利用状況を考えると、人間とロボットとの関係にある法則性を見出すことができる。
その法則を延長させていくと、僕らはいずれ以下のような5種類のタイプのロボットと暮らしていくと想定できる。
(実際は、目的に応じてそれぞれの特徴を併せ持つロボットを利用するだろう)
1.共生型ロボット
概要
外見
人格
できること
- 日常的な会話
- 簡単な家事
- 家屋や施設の簡単な監視
- 簡単な遊び相手
- 秘書的なスケジュール管理業務
- コンシェルジュ的な案内業務
- コンサルティング的な業務
できては(させては)ならないこと
- 暴力行為(偶発的なものであっても許してはならない。バグや誤動作を想定したハードウェアを設計すべき)
- 調理(人型のロボットに火や刃物を使わせない)
- 誤動作によるリスクの高い機器の制御
- 激しいスポーツの相手
- 生物的なレベルを超越した思考行為
- 生物的なレベルを超越した運動行為
事例
働き場所を広げるPepper、次はアジア太平洋地域のピザハットで就業予定
人型ロボットNAO(ナオ)がプレゼンテーション! アイネスが提供する「栄養マイスター Online」をご紹介
2.ソフトウェア型ロボット
概要
外見
デジタル上の擬似的な外見が与えられることがあるだろう。しかし、通常は現実世界に実体はなく、あくまでアプリケーションの一部として動作するにすぎない。
人格
メッセージのやり取りの上では、あたかも人格を持っているように思える。
これにどれだけ人間らしさや愛着を感じるかは、ロボットの用途や、個人の感じ方次第だ。
できること
-
パーソナライズされた情報の提供
-
情報の検索や調査
-
簡易的な家電や設備の自動制御
-
秘書的なスケジュール管理業務
-
コンシェルジュ的な案内業務
-
コンサルティング的な業務
-
生物的なレベルを超越した思考行為
-
各種アプリケーションの利用の自動化、高度化
できては(させては)ならないこと
-
自己増殖(自己複製を許すと、ウイルス化して削除不可能になる。なんらかのフレームワークやサンドボックスの中で動作させるべき)
-
誤動作によるリスクの高い機器の制御
事例
人工知能型チャットボット”マナミさん” LOHACO 全お問い合わせの 3 分の 1 をカバーし、省人化とお客様満足度向上を実現
「りんな」が言葉を紡ぐ裏には、最新の自然言語処理技術があった
3.業務用ロボット
概要
厳密にはソフトウェア型ロボットと区分するのは難しいが、便宜上項目を別にした。
外見
人格
できること
- 乗り物や機器の制御。あるいは機器そのもの
- 工業製品の製造や加工
- 調理
- 清掃
- 介護の支援
- その他、現状の各種機器を人工知能により性能向上させる
- 生物的なレベルを超越した運動行為(人間の安全に配慮した範囲で)
できては(させては)ならないこと
- 与えられた枠を超えた運動行為(歩道を暴走するロボット自動車は許されない)
- 高度な倫理上の問題が予想される業務(前述のトロッコ問題を参照)
事例
Foxconnが6万人の労働者をロボットに置換。人間は高度な作業に再割り振り
スカイロボット、人工知能を搭載したドローンで遭難者を探索する実証実験を実施
4.ウェアラブル・人体融合型ロボット
概要
外見
人格
最低限の警告やアナウンスなどを行うだろうが、人格があるとまでは言えない。通常は人格のようなものは存在しないと考えられる。
できること
- 欠損した臓器や感覚器を補う
- 欠損した四肢を補う
- 重労働を補う
- 運動能力を高める
- 脳に働きかけ感覚能力を高める
- 脳に働きかけ思考能力や記憶力を高める
できては(させては)ならないこと
- 生物的なレベルを超越した運動行為
- 人間の意思に反した行動の強制
- 人間の構造に反した行動の強制
事例
{学ぶ} 「装着ロボットスーツ」 軽くて自然な歩き心地
東大 暦本純一教授が語る、IoTの次に待ち受ける「IoA」とは何か
血管新生できる耳、3Dバイオプリントできました
5.ナノボット
概要
外見
人格
できること
- 癌の摘出などの外科手術
- 人工血液としての利用
- 人工的な免疫系の構築
- 人間の思考能力の拡張
- 現実空間への物体造形
- 機械油などに混じって機械のメンテナンス
- 環境に広がり、環境の洗浄や生態系の調整
できては(させては)ならないこと
- 人間の制御を超えた自己複製(最悪最強のウイルスとなる)
事例
世界初!カルシウムイオンで動く生体ナノマシンを発見
体内に薬を運ぶナノボットが3Dプリントで実現する?
このマシンは、ナノ粒子をレーザー硬化させて金属構造物を空中に3Dプリントする
まとめ
シンギュラリティの理論が提唱されてからも、技術はますます進歩を遂げている。
人工知能を搭載した高度なロボットが生活や産業に溶け込んでいくのも、時間の問題だ。
そこで今回は、ロボットと共存する未来に備えるために、5種類のロボットのあり方を想定してみた。
ロボットの進出を必要以上に恐れずに、新しい時代を生きるための準備をしていけたらと思う。
それではまた。
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