20代の中頃に僕は、恐ろしい夢を観た。
細長い顔をした黒い女性がどこまでも追いかけてくるのだ。
今でもその内容をまざまざと思い出すことができる。
今回はそんな、細長い顔の魔女が現れた夢を夢診断・夢分析してみたい。
目次
夢診断の手法
以下の記事で紹介した書籍などを参考に夢診断を実践した。
夢の内容
僕はある日の昼間、自宅にいた。
台所にいって水を飲もうとすると、水道の蛇口から恐ろしい女が現れた。
全体的には、ボブヘアーの小柄な女性といったところだが、その顔が細長かった。
痩せた体に、異常に小さなラグビーボールのような浅黒い顔が載っていた。
その女性が、軟体生物のように細く伸びて、蛇口から現れたのだ。
蛇口から出ると人の形をとるのだが、顔は細長いまま、僕に恨みがましくにじり寄ってきた。(この女は、数日前にも一度、別の似たような夢に現れた)
僕は逃げ出して、外へ飛び出た。
街角の様々な筒状のものから、彼女は登場した!
なぜか筒状のもの限定で、ワープ能力を持っていた様子。ジョジョ的な世界だ。
街中に行くと、辺りは夜中になっていた。
それでも彼女は筒ワープで追ってきた。
やがて僕は、険しい渓谷に辿り着いた。
辺りは明るくなっていた。
空は晴れて、石や岩だらけの渓谷の底に大きな川が見えた。
なんとなく僕は、夢であることを意識しはじめ、目覚めつつあることを感じた。
そんな渓谷にも、灰色のパイプが突き出ていた。
やはり彼女がニョロリと現れて、恐ろしい形相で迫ってきた。
僕は彼女から逃げて、目覚めの扉の直前までやってきた。(扉というか、あと数歩で目覚められるというライン?があった)
そのとき、親しい男の友人が立っていた。
彼は問いかけるように僕を見ていた。
そこで、『なにかが間違っている』という感じがした。
振り返ると、彼女はとても悲しそうだった。
僕は彼女に近づいていった。
逃げ惑っているから恐ろしいのだということに気がついた僕は、魔女を抱きしめて、謝った。
魔女はもう二度と僕を困らせないことが分かった。
診断対象者(僕)のプロフィール
夢の詳細
1.自分について
夢の中の自分は、当時と同じ25歳くらいの感じだ。
服装は普通の私服だと思う。
2.登場人物について
自分と細長い顔の女性が現れた。
あと、距離を置いて観察、または誘導してくる存在がいた。親しい男の友人は、僕の夢に8割くらいの確率で現れる、謎のナイスガイだ。ハイヤーセルフ?とでも言えるのかも知れない。一定の距離を保ち、ゆるーくメッセージを送ってくる親しげな男であることしか分からない。
ユング心理学では、「自己の元型の心像」とでも言うのだろうか。または、アニムスが存在する可能性があるのだろうか。いずれにしても、彼自体はいつも脇役だ。
3.時間と場所について
場面1:自宅の台所(朝~昼間)
場面2:家の外(昼間)
場面3:街中(夜)
場面4:渓谷(昼間)
こんな具合に、めまぐるしく展開した。
場面1については、自宅であることから、夢自体が日常の意識に近いテーマであることが考えられる。そこから台所に移動して物語がはじまる。台所は調理をして新しいものを作る場所であるため、夢の中で変化や創造を起こそうとしているメッセージだとも考えられる。
家の外や街中の場面では、今回の夢=魔女のイメージが、四六時中自分に付きまとっていることを表している。
最後の渓谷の場面は、大地の力(太母、自然の力、根源的な力)の場をイメージさせる。また、現実に近い、理性的な場でもある。
退行した意識の自分は魔女を恐れていたのだが、現実に近い意識の自分は、自己(セルフ)の忠告を聞いて、最終的に魔女を受け止めることができたようだ。
このとき、「自己(セルフ)」と「日常の意識に近い自分」と「魔女」の三者で、統合の儀式をしたような感じに思える。
4.物や動物について
5.行動について
6.感情について
7.連想について
水道管や蛇口や筒状のものは、以下を連想させる。
- 水や重要なものを送るもの
- 隠された場所で重要なものが行き来している
- 無意識と意識のやりとり
- 顕在意識では認識しにくい観念がメッセージを送ってきている
- 女性の膣
- 声を発する喉
魔女については、以下を連想させる。
- 女性に対する不信感、苦手意識
- ガールフレンドからの束縛の強さ
- 母親への苦手意識
- 女性的な心の機能(直感機能や感情機能)に目を向ける
- 自分のわがままな面などを否定し、善い人間であろうとしている
8.ストーリーについて
女性に対してひたすら怖いイメージがあったが、最後は許容した。
夢診断をしてみる
全体的な内容としては、女性を理解してうまく立ち回っているつもりになっていた自分に対して警告を促す、「逆補償の夢」であり「単純な補償の夢」という感じがする。
当時は女性の言動や考え方を理解できず、男とは別種の特異な生き物だと決めつけていた。(それはある意味で今でもそうだが…)たぶん、そんな自分に対して、潜在意識が警告を放ってきたのだと思う。
また、当時のガールフレンドに対して僕は、束縛ばかりする理解不能な怪物だと思ってしまっていたという理由があるだろう。
夢の内容を象徴的に受け取れば(主体水準)、自分の心の中で孤立した、女性的な心的機能(感情、直感)を重視しなければならない、というメッセージとも取れる。(別の記事にも書いたが、夢や占いに興味を持っていたのに、それを無視してエンジニアの仕事に打ち込んでいた時期だった)
魔女はどこに行っても、忍び寄ってきて突然現れる。
まるで、女性とのコミュニケーション問題に四六時中悩んでいる状況を、暗示しているかのようだ。(顕在意識ではそこまで考えていなかったが)
夢の最後で、セルフの忠告(目配せ)によって、僕はそんな態度に疑問を抱くことができた。
たいてい、女性は話を聞いて欲しいと願っている。いや、男女を問わずだれでもそうか。
この夢を通して、合理性や観察的な事実だけではなく、感情や直感によって、和やかに他者とコミュニケーションをとるということの大事さに、少しくらいは気がつけたのだと思う。(そうでありたい、という希望)
とはいえ、根本的に僕は理屈っぽいことに変わりなく、こんな記事を書いているわけで、女性のことなども1%も理解していない。(残念)
この夢を観てからは、なんとなくあの魔女が、自分の味方になっているような気がしている。理屈ではどうしようもない行き詰まった場面になったとき、「ワガママかつ自分本位な悪態をつく、みっともない自分」を可能性として許容するようになった気がする。
今回登場した要素に元型を割り当てて考えてみると、
- 魔女:性的なアニマを脱しつつある段階だろうか。異性でありながら、シャドウのイメージが強くもある
- 親しげな男性:いつもの自己(セルフ)的な傍観者?
- 渓谷、筒:太母(グレートマザー)の象徴
こんな具合だと思う。
まとめ
やはり、この魔女の夢をいまだに覚えていて、折に触れて思い返しているという事実が興味深い。おそらく僕にとって、半生、いや、生涯のテーマであるのだと思う。
先日も、妻の提案に対して理屈と観察によってくだらない批評をして、怒らせてしまった…。
もしかしたら、人間はたった一度観た夢によって、(きちんと向き合うことで)人生をより良く変えることができるのかも知れない。
あなたも、夢診断・夢分析に興味が出たら、実践してみてはどうだろう。